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TVアニメ第2期決定・累計3300万部『薬屋のひとりごと』。最新15巻は医療ドラマと大人の愛憎劇が見どころ!

2024年4月25日

  • 薬屋のひとりごと"
    『薬屋のひとりごと』(日向夏:著、しのとうこ:イラスト/イマジカインフォス)

     とある国の宮廷で起こるさまざまな事件を、後宮の下女が医学・薬学の知識を武器に解決していく小説『薬屋のひとりごと』(日向夏:著、しのとうこ:イラスト/イマジカインフォス)の15巻が発売された。


     本作はそもそも人気作品だったが、今はさらに破竹の勢いだ。コミカライズもされており、シリーズ累計は3300万部突破、さらにこの春終了したTVアニメは、2025年の第2期放送が発表されたばかりだ。鮮やかな構成、美しい作画、迫力ある劇伴、そして主人公・猫猫(マオマオ)役の悠木碧さんや壬氏(ジンシ)役の大塚剛央さんをはじめとした声優陣もハマっていたTVアニメが、どれだけパワーアップして帰ってくるか楽しみで仕方がない。いずれにしてもますます人気が高まりそうな本作は、小説で最新の物語が語られているのだ。


    ■「薬屋」の下女が宮廷で起こる難事件に挑む!


     まず改めて本作のストーリーをおさらいしておく。花街で生まれ育った17歳の少女・猫猫は、人さらいにかどわかされて後宮で下女として働くことに。その後宮や宮廷は、華やかだが愛と死、嫉妬と裏切り、そして陰謀が渦巻き大小さまざまな事件が発生していた。猫猫はそんな事件に挑んでいく。彼女はドライだが強い知的好奇心と、理不尽さに対しての怒りの感情をもっていたからだ。そして元医官だった養父の影響で薬学に通じていたのも大きい(薬や毒への思い入れが強すぎて暴走しかかることも……)。


     ときには自らの意思で、ときには彼女を「薬屋」と呼ぶ美しき宦官・壬氏(ジンシ)の命を受けて事件を解決していく。ただ小さいと思われた複数の事件が、やがて巨大な陰謀に繋がっていく。スケールアップしていく本筋と並行して、猫猫と壬氏をはじめとした登場人物たちの物語も語られていく。


    ■最新15巻は医療ドラマ? たっぷりと書かれる大人の愛憎劇にも注目


     猫猫は西都から約1年ぶりに中央へ戻ってきて医官の手伝いを始めていた。彼女は15巻で医官たちと共に、“ある試験”を受けさせられる。無事に試験に合格した猫猫は、養父である羅門の下で投薬実験を行うことになった。そこで彼女はこの実験がたいそう大掛かりなものであることに疑念を抱く。投薬だけではなく、外科手術も試行されていたからだ。


     これは一体何のため、誰のためなのか。ただ、試験に合格した医官も猫猫もその疑問を口に出すことは許されない。それが答えなのだ。この医官の選抜も投薬実験も手術も「誰のため」なのかが明るみに出れば、国を揺るがす大事になるということである。


     着々と“準備”が進むなか、猫猫たちは手術で使う麻酔についてのヒントを、禁書でありながら優れた医学書でもある『華佗の書』から得ることができた。それが、人を仮死状態にできる薬の材料「曼陀羅華」だ。これは猫猫が忘れたくても忘れられない事件のキーになったものである。猫猫は阿多(アードゥオ)妃の離宮に向かう。そこにはかつて「曼陀羅華」を使った翠苓(スイレイ)がいるのだ――。


     15巻のポイントのひとつが、緊迫感のある医療ドラマである。選抜されたあげく、猫猫と医官たちは命を懸けて準備を進め手術に臨む。理不尽なようだが、それが宮廷まわりで生きる者の定めであった。


     そして、もうひとつのポイントが大人の愛憎劇である。猫猫と壬氏の仲は気になるところだが、ここではおいておく(本書でもふたりの描写はあるので読んで確かめてほしい)。本書は阿多妃と、ほかならぬ皇帝に焦点をあてるのだ。このふたりのお互いの気持ちを確かめるようなやりとりと、壬氏を巻き込んだ複雑な思いがたっぷりと書かれている。そして、そこには猫猫がいる。


     これまでも書かれてきた登場人物たちのさまざまな言動や心情、それらをクールに見つめ、分析していた彼女を待ち受ける運命とは――。まだアニメしか見ていない方も、コミカライズ版を読んで先が気になってしまった方も、最新の猫猫の活躍を読んでみてはいかがだろうか。


    文=古林恭

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