
6人の少年が標本にされ、森の中に置かれている衝撃的なシーンから始まる、実写ドラマ『人間標本』(Prime Videoで12月19日(金)から独占配信)。原作は湊かなえさんの同名小説『人間標本』(角川文庫/KADOKAWA刊)だ。ドラマ冒頭で警察に出頭するのは、西島秀俊さんが演じる蝶の研究者、榊史朗(さかき しろう)。そして殺された6人の少年の中には、史朗の息子、榊至(さかき いたる/市川染五郎さん)もふくまれていた……。
「親の子殺し」という大きなテーマに挑んだ本作の実写ドラマ化について、原作者・湊さんと主演・西島さんにお話をうかがいました。
――『人間標本』は、蝶の研究者が息子をふくむ少年6人を殺して標本にした事件をめぐる物語です。「本当に実写化できるの……?」とそわそわしながら拝見し、冒頭に登場する標本があまりに背徳的で美しく、息を呑んでしまいました。
湊かなえさん(以下、湊) ぞくぞくしますよね。最初に、森のなかに6体の標本が置かれているさまが印象的に映し出され、西島さん演じる榊史朗が微笑みを浮かべながら警察に出頭し、罪を告白する。始まって10分足らずのその流れに「なんだかすごいものが始まったぞ!」と期待せずにはいられませんでした。

西島秀俊さん(以下、西島) 原作があまりにおもしろかったので、ぜひ挑戦したいと、一も二もなく引き受けたのですが、いざ脚本を読んで「大変な決断をしてしまったのではないか」と血の気が引く思いがしました。小説を読んでいるときは、ぐいぐいと物語に引き込まれていきましたが、実際に映像化すると考えるととても難しく、ハードルが高かったです。本の中では、ある人の主観に同化して読み進めますが、映像の場合、第三者の視点で撮るので、客観的に史朗という人間を見つめ直したとき、このときは何を考えていたのか、他人からはどう見えていたのか、などさまざまな視点が入りまじるため本当に複雑でした。
――事件の真実だけでなく、複数の視点が入ることで、登場する人物一人ひとりの内面が多角的に浮かびあがってくるのも、湊さんの作品のおもしろさですよね。
湊 映像化することで、その多角的な視点がよりくっきり浮かびあがっていたのが、私も興味深かったです。とくに、殺された少年たちに対する印象が、史朗と至とではこんなに違っていたのだなあ、と。小説で、少年たちの表と裏をすべて史朗の手記にまとめたのは、構造上、そうする必要があったからですが、それをただ踏襲するのではなく、映像ならではの仕掛けに変えてくださったことで、私も新鮮に楽しめました。