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※本記事は、雑誌『ダ・ヴィンチ』2026年1月号からの転載です。



さまざまな物語に登場する女性から生きる強さと光をもらう鈴木涼美さんの本誌連載『めめSHEやつら』。その書籍化を記念して、作中で参照された小説『うつせみ』の作者・紗倉まなさんとのスペシャル対談が実現。フィクションが人生にどのような救いを与えるか――AV女優と小説家という異色のキャリアを共通して持つお二人に、言葉を交わしていただきました。


紗倉まなさん(以下、紗倉):涼美さんの文章って、鋭い視点なのに全然意地悪じゃないんですよね。誰かを過度に蔑むことなく、常に一定の温度で現象をさばいてくれるから、安心して読むことができる。その文章に憧れて、生まれ変わったら涼美さんになりたいと周りにも常々公言していたので、『うつせみ』を今回のエッセイで取り上げていただけて本当に嬉しかったです!


鈴木涼美さん(以下、鈴木):作中でも書いたけど、『うつせみ』の主人公の辰子って本当に煮え切らない女性なんですよね(笑)。美容整形を繰り返す祖母や、売れるためにできることはなんでもするグラビアの同僚みたいに覚悟を決められなくて、どっちつかずの状態でふわふわしている。だからこそ共感できるんです。そりゃあ振り切った生き方ができるほうがカッコいいし、憧れるけど、ふつうの人にそんな勇気はなかなか出せないじゃないですか。インスタに載せるために美肌加工くらいはするけど、原形を留めないほどの加工はちょっと引く……みたいな。そういった曖昧な線引きをしながら生きている人がほとんどだと思うんです。だからその曖昧さや葛藤にちゃんと向き合っているのが、まなちゃんの作品の魅力だと思います。


紗倉:ありがとうございます。最近の傾向として、断言できる強さを持った人のほうが支持されやすかったりしますよね。ふるまいや思考が一貫していることを望まれるというか。SNSで過去の言動をディグられて現在との不一致を批判される可能性があるから、自分の立ち位置がぶれてはいけないという圧を常に感じるんです。だから涼美さんが辰子の優柔不断さに心を寄せてくれたことが、とても嬉しくて。


鈴木:不一致があって当たり前、むしろ一貫した人間なんて不自然だと私は思うんですけどね。たとえばフェミニストとして活動している女性だって、男性にごはんをおごってもらったり荷物を持ってもらって嬉しかったりということはあるだろうし、あってももちろんいいじゃないですか。そういう矛盾や葛藤と向き合っていく辰子のような存在に救われる人はたくさんいると思ったから、『うつせみ』はぜひ紹介したかったんです。


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