※本記事は、雑誌『ダ・ヴィンチ』2026年1月号からの転載です。

男性同士の恋愛に限らず、いろいろな形の愛情を書いたんだと思うんです
高校1年生の時に心と体が入れ替わったまま、15年間戻れない男女の特別な関係性を描いたデビュー作『君の顔では泣けない』(2021年)が実写映画化され、話題沸騰中の君嶋彼方。映画の仕上がりは、原作者も舌を巻くものだったという。
「関係者向けの最初の試写会で拝見する時に、“どうでしたか?”と聞かれても波風が立たないよう無難なコメントを用意していたんですが、感動で全てすっ飛びました。主演のお二人(※「坂平陸」役の芳根京子と「水村まなみ」役の髙橋海人)が役に入り込んでくださっていて、陸とまなみにはこんな感情があったんだ……と、映画を観たことで発見した部分がたくさんあったんです。本当に素晴らしい作品でした」
待望の最新刊『だから夜は明るい』は、全6編からなる自身初の連作短編集だ。デビューから間もない時期に発表し、単行本でも冒頭に置かれた一編「ヴァンパイアの朝食」が出発点となっている。
「別の短編で、男性同士の恋愛感情を書いていたんです。ただ、メインのテーマではなかったこともあり、物語を動かす一要素として使ってしまったことが自分の中で引っかかっていました。もう一度、作家としてちゃんと男性同士の恋愛に向き合ってみたかったというのが、1話目の『ヴァンパイアの朝食』を書いたきっかけでした」
27歳の文也(「僕」)は、33歳の祥太と付き合って3年、都内マンションで同棲を始めて1年半になる。「恋愛」が「生活」にスライドしつつある2人の描写がまず、抜群にリアル。2人の過去のなれそめも、運命を感じさせるものでありながら共感性が高い。