ダ・ヴィンチWeb


「うちの子はいじめなんてしない」。子どもを信じている親がそう考えることは当然である。しかし、『娘はいじめなんてやってない』(しろやぎ秋吾/KADOKAWA)は、その気持ちを揺さぶってくる作品だ。


物語は、小学生の男の子がいじめを苦に遺書を残して自殺未遂するところから始まる。その遺書には、いじめをしていたのが自分の娘であったと書かれていたことを知り衝撃を受ける母親。娘は涙ながらに「していない」と訴えるが、SNSでの告発をきっかけに無情にも彼女を加害者の立場へと追い詰めていく。そして誰も真実が見出せないまま、事態は静かに深刻さを増していく。果たして本当にいじめをしていたのは誰なのか。


本作の特徴は、いじめの加害者と被害者という単純な構図ではなく、さまざまな視点で描かれていることだ。読み進めるにつれて、ひとつの側面からでは説明できない問題であることが鮮明になっていく。


  • 続きを読む