※本記事は、雑誌『ダ・ヴィンチ』2026年2月号からの転載です。

第62回野間児童文芸賞受賞の栄誉に輝いた『杉森くんを殺すには』がジャンルの垣根を越え、世代を越えてベストセラーとなるなど、熱い注目を集める長谷川まりる。最新作『花売り姫』は、一般文芸として刊行される長編小説だ。昔ばなしを思わせる世界観が採用されている。
「大塚英志さんが原作を担当されているマンガがきっかけで、民俗学が好きになりました。特に“山人伝説”に惹かれたんです。民俗学者の柳田國男は、世間で妖怪と言われている存在は、いろいろな背景を持って山で暮らしている“山人”のことなんじゃないかと言ったんですよね。じゃあ、“山人”の中でも美しい女性の姿をした“山姫”は、いったいどんな背景を持った人だったのかな……と想像を膨らませていくうちに、このお話の大枠の設定が生まれました」
本作には「取り替え子」の要素も入り込んでいる。妖精などが人間の子どもを誘拐し、その代わりに自分たちの子どもを置いていくというヨーロッパの伝承だ。
「取り替え子に興味を持ったきっかけは、アレックス・シアラーの『13ヵ月と13週と13日と満月の夜』という小説を読んだことでした。あのお話は、魔女に体をすり替えられてしまった友達の体を取り返そうとして、主人公が頑張るんですよね。それを読んだ時に、“取り替えられた側”の子どもの話をいつか書いてみたいと思っていたんです」