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※本記事は、雑誌『ダ・ヴィンチ』2026年2月号からの転載です。



誰しも「子供の頃に仲良しだった人形」の思い出はあるだろう。いつも一緒だった遊び相手。時には親や友達にも言えないことをそっと告白したりもした物言わぬ親友。


だが、そんな愛おしい存在が世にも恐ろしい殺人鬼になってしまったとしたら?


ミステリーの名手・阿津川辰海さんが新刊『ルーカスのいうとおり』で挑戦したのは、ホラー小説では定番ともいえる人形ホラーだった。


「本作の出発点は、映画『チャイルド・プレイ』を本格ミステリーでやりたかったというところにあります。構想し始めたのは映画『M3GAN/ミーガン』が公開されたぐらいのタイミングでした」


『チャイルド・プレイ』は日本では1989年公開の米国映画で、殺人鬼の魂が乗り移った人形が次々人を殺す衝撃的な内容が話題になり、今や人形ホラーの古典と化した作品。一方、『M3GAN/ミーガン』は2023年に公開された米国映画で、子守用AIドールの暴走を描くSFホラーである。


どちらも愛らしい人形が残忍かつ無慈悲な殺人鬼となるギャップが恐怖の肝になっているわけだが、阿津川さんはそこにもう一捻り加えた。


「人形ホラーと本格ミステリーを融合させるには、どんな謎を用いればいいのか。色々と考えた結果、『チャイルド・プレイ』のように最初から霊の正体を明かすのではなく、霊の存在をほのめかしつつ、宿るモノの正体を探る話にすればいいのではないか。それを思いついたのが大きな出発点になりました。同時に『チャイルド・プレイ』のように、子供が見ている世界と大人が見ている世界の違いをミステリーの構造に活かせばいけるだろう、と」


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