
はたして親の愛は子どものためになるのか。そして本当の子どもの幸せとは何か。『すべては子どものためだと思ってた』(しろやぎ秋吾/KADOKAWA)は、体の弱い子どもを持つ親を主人公に、子どもの“普通の幸せ”を願うあまり不安や焦燥に囚われていく過程を描いたコミックエッセイだ。
専業主婦の土井くるみは小学校に通う長男・こうたに、特別じゃなくても普通の幸せをつかんでほしいと考えていた。しかし、体が弱く自己主張もあまりしないこうたがクラス内のヒエラルキー下位にいることを知る。さらに、こうたが進学予定の公立中学校の評判が悪いことから、中学受験を決意する。受験勉強のためにさまざまな情報を仕入れ実践していくくるみ。だが、彼女の思いは彼と家族を次第に追い詰めていく――。
まず胸を刺すのは、親なら誰もが持つ親心が、いつからか狂気となり、過干渉な「毒親」へと転じていくプロセスをじっくり描いている点だ。くるみの行動はすべて「子どものため」という思いをよりどころにしているが、その裏側には子育てを失敗してしまう不安や恐れ、そして他者との比較や他者からの評価への過剰な反応がある。彼女の気持ちに共感しながらも、次第にその思考の暴走が子どもや家族にどんな影響を及ぼしていくのかを目の当たりにし、“善意の暴力”の怖さにも息を呑むだろう。