
『喫茶 行動と人格』(田房永子/竹書房)は、喫茶店というありふれた空間を舞台に、人間関係のもつれや会話の行き違いを、「行動」と「人格」のふたつの観点から読み解いていくユニークな作品だ。
物語は奇妙な名前の喫茶店「喫茶 行動と人格」の中で進んでいく。そこにはちょっと変わった従業員や常連客が、店内で起こった他の客のイザコザを「案件」と呼び、まるで大学のゼミのように議論を交わす。そんな不思議な空間に偶然迷い込んだ普通の会社員・尾形は、次第にその思考の渦に引き込まれていく。
本作の核になるのは、「行動」と「人格」を混同しないで考えることの大切さだ。人間はしばしば、誰かの行動だけを見て「この人はこういう人だ」と人格まで断定してしまう。しかしこの作品では、日常的なトラブルを題材にしながら、「その行動だけで人格まで決めつけていいのか?」という問いを投げかける。行動はたまたま起きた出来事の結果であり、その裏にある背景や事情は千差万別だから、短絡的に人格を結びつけるのは危ういこと。そんな気づきを、会話の掛け合いや考察を通して描いていく。