
『異世界の沙汰は社畜次第』(采和輝:著、八月八:原作、大橋キッカ:キャラクター原案/KADOKAWA)の主人公・近藤誠一郎は、三十路直前。どこにでもいそうな社畜サラリーマンだ。聖女召喚という壮大な異世界イベントに巻き込まれた彼が、真っ先に求めたのは「冒険」でも「チート能力」でもなく、まさかの“仕事”だった――。
衣食住を保障されてもなお働こうとする姿には思わず笑ってしまうが、同時に、その真面目すぎる姿勢は異世界ではどこか異質にも映る。近藤にとって仕事とは、生活の手段以上に、自分自身を支える欠かせないものなのだろう。だからこそ、異世界でも愚直に働き続ける姿は、自然と応援したくなる。
読み進めていくと、「異世界×お仕事もの」としての完成度の高さが際立つ。効率重視で理性的、感情よりも合理性を優先する近藤の働きぶりは実に痛快で、異世界においても“社畜スキル”が遺憾なく発揮されていく。その過程で、自然と距離を縮めていくのが、“氷の貴公子”と呼ばれる騎士団長・アレシュだ。