
『うちのツマ知りませんか?』(野原広子/オーバーラップ)は熟年夫婦の危機をテーマにしたクライムミステリーだ。
物語は、「お醤油を買いに行ってくる」と言って家を出た55歳の妻・ヨシ子が、そのまま戻ってこないという出来事から始まる。結婚30年。お見合いで結ばれ、子どもにも恵まれ、これといった不自由もなく暮らしてきた。大きな波風も立てず、夫婦は穏やかに年を重ねてきた――。少なくとも、夫・康はそう思っていた。だからこそ、その失踪はあまりにも突然で、現実味のない事態だった。
朝になっても帰らない妻を案じ、夫はヨシ子のパート先に電話をかける。そこで告げられたのは、彼女がすでに退職しているという事実だった。さらに、ひとり息子とも連絡を取っていないことがわかる。状況が明らかになるにつれ、「ただの外出ではない」という現実が、じわじわと重くのしかかってくる。