ダ・ヴィンチWeb


漫画家の鳥飼茜さんは、2度の結婚で姓を2回変更。現在のパートナーとの3回目の結婚を考え始める中で、2度目の結婚時から変えていなかった姓を変更するため手続きを経て役所に向かったが、窓口でかけられたのは「今日から法律が変わりました」という言葉だった。姓の変更にまつわる珍事をきっかけに、結婚の不平等性に向き合い、語り尽くしたエッセイが『今世紀最大の理不尽 それでも、結婚がしたかった』(文藝春秋)だ。本書を書き上げた今の心境や読者への思いについて、鳥飼さんに聞いた。



語ってはいけない家庭生活には理不尽や無念が隠れている


――本書の最初の「今日から法律が変わりました」のパートは『文學界』に掲載されて、それ以降は書き下ろされたそうですが、このエッセイを書かれたきっかけを教えてください。


鳥飼茜さん(以下、鳥飼):私は、2回結婚と離婚を経験していて、それってわりと珍しいと思うんですけど、私が個人的に感じた違和感や無念さを、結婚や離婚を経験した人に話していると、全然違うメンバーで行われている結婚なのに、似た形の悔しさを感じている人が多いことがわかったんです。でも、結婚をしていた時の違和感を外で話すことって、世の中的には無礼とか大人げないことだって思われてるふしがあるから、あまり話すべきではないと思っていたんですね。


でも、2回目の離婚をした後、名字変更に関する事件が起きて、それがエッセイの発端になりました。そのエッセイに自分の結婚の話を混ぜたら、私と同じような珍しいことが起きていない人もたくさん、結婚の非対称性に共感してくれて。それどころか、「書いてくれて嬉しい」と言ってもらえて……ちょっと調子に、乗っちゃったんです(笑)。


――(笑)。


鳥飼:ということは、「むやみに語ってはいけない」とされている家の中の話には理不尽さや無念の気持ちがたくさん隠されているんだろうなと。そこに何らかの相似形があるとしたら、日本で男性と女性が法律の下で婚姻する時に起こる基本の理不尽の形があるのではないか。そして、そういうことをオープンに話すことで心が楽になる人がいっぱいいるんじゃないかと思って、書いていくことにしました。


偽った過去を経て素直に書けることがすごく楽しかった



  • 続きを読む