
『もう3年、産後うつ。 消えたい衝動から抜け出せない』(青柳ちか/KADOKAWA)は、産後うつに苦しむ母親の葛藤を、本人の視点で赤裸々に描いたヒューマンドラマだ。産後の喜びと不安、そこから抜け出せない心の闇が紡がれていく。
主人公は、5年続けた不妊治療に終止符を打ち、仕事に邁進しようと決めたちはる。大きな仕事のプロジェクトリーダーを任され、これからという時に妊娠が発覚。嬉しい気持ちのなかに「なぜ、今……」という小さな罪悪感が入り混じり困惑する。出産後は育児と仕事の両立を目指したものの、思ったようにうまくいかない日々に苦しむ。娘が生まれてから3年経っても「産後うつ」に苦しんでいた。
物語は、出産前に生き生きと働く自分を回想し、生まれたばかりの子どもに「ごめんね」と謝る彼女の姿から始まる。育児の不安、仕事に復帰できない焦り、そして自分の感情が以前と同じではないという戸惑い——。わが子を愛おしく思えない自分への怒りや罪悪感など、すべての感情が詰め込まれた「ごめんね」だ。「普通なら」喜びに満ちているはずの瞬間に不安や虚無感が入り混じり、「普通なら」ということへの葛藤もまた、彼女を苦しませる。産休中に夫が働きに出る姿をうらやましく感じたり、実家の居心地の悪さから里帰り出産を拒絶したりと、母親になることに伴う孤独や葛藤がリアルに描写される。