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俳優・モデルの杏さんが、新作エッセイを2冊同時に上梓した。3歳の双子と1歳の長男を連れたパリ旅行を描く『杏のとことこパリ子連れ旅』(ポプラ社)と、3回の旅行を経て移住を決意し、日本とフランスの二拠点生活を綴った『杏のパリ細うで繁盛記』(新潮社)の2冊だ。2冊同時に読めば、子どもたちや周囲の人々を巻き込みながら、楽しいことも大変なことも明るく前向きに乗り越える杏さんの姿に、励まされること間違いなし。


それぞれのエッセイを執筆した経緯から現在の二拠点生活についてまで、お話をうかがいました。


『杏のとことこパリ子連れ旅』 (ポプラ社/杏)


『杏のパリ細うで繁盛記』 (新潮社/杏)


――パリでの二拠点生活を、暮らしと旅の両面からそれぞれ描いた『杏のとことこパリ子連れ旅』と『杏のパリ細うで繁盛記』。移住を決めた杏さんがふと「今まで生きてきて、初めて自分のことが好きになれそうな気がする、かも」と口にしていた、というエピソードが印象的でした(『杏のパリ細うで繁盛記』より)。


杏さん(以下、杏):「なれそう」「かも」と言っているところがミソで、移住したからといってガラリと自分を変えられるわけではなく、今も「自分大好きです!」とは思っていないんですけど(笑)。あのときはなんだか、わくわくしてしまったんですよね。行き先がパリだから、ではなくて、これまで培ってきた生活のほとんどを置いていかなきゃいけない、右も左もわからない新天地で、生活をゼロから作りあげていかなきゃいけないことを想像したとき、新たに自分と出会いなおせるかもしれない、というような、不思議な高揚感が湧いたんです。たとえるなら、はじめて一人暮らしをすることになったときの、前よりもちょっと大人になれたような気持ちに似ていました。


――仕事のスタイルも変わるから、つめこみスケジュールで生きてきたこれまでと違って、はじめて余白のある暮らしをすることになる、という予感も大きかったと思います。実際、暮らし方が変わったことで、ご自身に変化はありましたか?


杏:二拠点生活になったことで、「自分」という存在がもう一人増えたような気がするんですよね。といっても、二人力になったわけではなく、濃度の薄まった0.7人前の自分が二人いる、みたいな感じ。作中に書いたように、「こんなに自分はポンコツだっただろうか?」と驚くほどミスが増えたのも、そのせいだと思います。でも、そのぶん世界は広がった。濃密に凝縮された暮らしから、多少薄まるものがあったとしても広がりのある暮らしを得られたことは、やっぱりとても楽しいですね。


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