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フィジーの小人 村上龍 / 講談社


メディアで、あるいはSNSで「コンプライアンス」という言葉が声高に叫ばれはじめたのはいつ頃だろうか。試しにGoogleトレンドで「コンプライアンス」という単語を入力し、2004年から現在までのグラフを出してみた。結果は、2025年6月だけが不自然に突出したグラフとなった。この時期、ある大物タレントが複数のコンプライアンス違反があって番組を降板したことや、テレビ局社員との不適切な事案があったことなどが記憶に新しい。


もはや炎上するのは公人だけではないこの時代、より慎重な言動が求められている。しかしそんな現代にこっそりひとりで読んでほしいのが、この一冊。1993年に発売された村上龍の『フィジーの小人』(講談社)だ。


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身長98センチ、道化師として働く33歳の小人・ワヌーバを主人公とし、彼がめくるめく快楽の世界に落ちていく話なのだが、これがもうコンプライアンス違反のオンパレードなのである。そっと口に出すことも憚れる単語が頻出する物語となっている。小説雑誌「野生時代」で3年以上にわたって連載されていたようだが、当時の読者はどんな気分で読んでいたのだろうか。


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