2026年5月20日(水)発売のタナカヒロキ氏の初小説『陽と月』(KADOKAWA刊)の刊行を記念し開催された「『陽と月』×monogatary.com発売記念コラボコンテスト」の受賞作が決定しました。

今回の書籍化記念コラボ企画では『陽と月』の作中でもモチーフの一つとなったLEGO BIG MORLの楽曲「Ray」をインスピレーションの源にした「今は会えないけれど、心にのこる人」のお題に計268作の応募作品が集まりました。
mongatary.com 運営スタッフによる1次選考、KADOKAWA編集チームによる2次選考を経て、最終選考作品として15作を選出。その15作品から、選考委員長 タナカヒロキ氏の選考により、大賞受賞作品と入賞作品が決定しましたのでお知らせいたします。
▼大賞作品
■見えなくなるまで見送って/ 舞浜 シズク
【大賞作品『見えなくなるまで見送って』全文】
彼が乗るタクシーのテールランプが、見えなくなるまで見送って。
店内は暖色の照明に包まれ、グラスの触れ合う音や笑い声に満ちていた。宮城くんを想う人々が集まる送別会。彼はビールグラスを片手に持ち、三年前に私が指導者として配属式へ迎えに行った時の話を始めた。
「福島さんという苗字と役職だけをお聞きしていたので、勝手に男性の指導者が来るものだと思っていました。他の新人が同性の先輩方と会議室を出て配属先へ向かう中、僕はいつまでも福島さんが現れず、広い会議室で待ち続けていました。人事部の方が『福島さんは方向音痴で会議室が見つけられなかったみたいで。いま喫煙所にいると連絡がありましたので案内します』と言われ、訳の分からない人の元につくのだと落胆しました。煙草を吸いながら横柄な態度。そして現場の主任という怖い上司。そんな人を想像し、緊張しながら人事の方を追いかけ、長い廊下を渡り、階段を降りる。外に繋がるドアを開けると、瘦身でチャコールグレーのスーツを着た女性が煙草を吸っていました。『あの人が福島主任です』と紹介されて。福島さんは『ごめん、会議室に辿り着かなかったよ』って」