
物価高、上がらない実質賃金、円安。そしてウクライナや中東情勢の緊迫化と、それによる資源価格の急上昇や供給不安。世界はただならぬ閉塞感に覆われている。そんな状況下で人々は、分かりやすいポピュリズム(大衆迎合主義)を引っ提げてリーダーシップを発揮してくれる存在を求めがちだ。
村上龍『愛と幻想のファシズム』(講談社)は、40年も前に書かれた作品にもかかわらず、今の日本の状況とリンクする。40年を経てもなお、社会は停滞したままなのか。

本作の舞台は1990年前後の日本。カナダでハンターとして過ごしていた主人公・トウジは、インディーズ映画監督・ゼロとの出会いをきっかけに、日本に帰国し政治結社「狩猟社」を結成。独裁者としての頭角を現していく(余談だが、この2人は「新世紀エヴァンゲリオン」に登場する碇シンジのクラスメイト、鈴原トウジと相田ケンスケのモデルでもある)。