
『熟年不倫サレ母は今日も離婚に踏み切れない』(ナナリョウ:原作、灯まちこ:漫画/竹書房)は、父親の不倫発覚をきっかけにした熟年離婚の危機に揺らぐ家族の姿を、子どもの視点から描いたコミックエッセイである。
物語は、娘・菜々のもとに妹から「父が不倫している」という知らせが届くところから始まる。還暦を迎えた母親は突然、サレ妻となり、家族は不倫の証拠を集めるために奔走する。そんななかで母親は「絶対に離婚する」と一度は決意するものの、長年連れ添ってきたという現実の前で、その意思は次第に揺らいでいく。
本作は不倫という出来事以上に「離婚に踏み切れない理由」の複雑さを描き出す。40年以上にわたる結婚生活は、単なる愛情だけでなく生活基盤や社会的立場、家族関係といった多層的な要素によって支えられている。浮気という明確な裏切りがあってもなお、夫婦関係を断ち切れない現実は、外側から見れば理解しがたい。しかし本作は、その割り切れなさと熟年夫婦という重みを浮かび上がらせている。