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45歳で夫が若年性認知症になった。夫がまるで夫じゃないみたい… 愛する人の性格が変わっても愛し続けることはできますか?

2024年9月7日

  • 「永遠の愛」を誓った夫婦に、若年性認知症という試練が訪れる。 外見は変わらなくても、内面がまったく別人に変わってしまう…。その人をあなたは愛し続けられるだろうか。


    『夫がわたしを忘れる日まで』(吉田いらこ/KADOKAWA)は、夫・翔太が45歳で若年性認知症と診断されたことをきっかけに、妻・彩がその現実と向き合いながら、家族としてどう生きていくべきか模索していく物語である。


     仕事熱心で穏やかな翔太が、物忘れを繰り返すようになる。当初は歳のせいだと楽観視していた彩だが、精密検査の結果、翔太は若年性認知症と診断される。生活環境を整え、うまく病魔と付き合っていこうと現実を受け入れていく夫婦。しかし、次第に物忘れや感情の起伏が激しくなっていく翔太に対して、彩は苛立ちと不満を募らせていく。


     一方で、認知症と診断された翔太の日記を通して、彼自身の心の内側も赤裸々に描かれている。 周囲の人々は翔太を励まそうと「大丈夫」「頑張ろうね」と声をかける。だが彼にとっては、何一つできない自分への優しさは苦痛でしかない。それが次第に心を閉ざしていく原因となる。 そんな翔太の姿は、胸に迫るものがある。

     また翔太の変化に戸惑いながらも、妻として夫を支え、母として家族を守ろうとする彩の心の葛藤は読者に強い印象を残す。夫の介護と仕事の両立、そして幼い息子への影響の間で揺れ動き、次第に追い詰められていく。 翔太と距離を置くことを決断した後に、彩が感じた「解放感」も想像に容易く切ない。


     病気や事故によって当たり前の日常が突然失われてしまう怖さを、他人事ではなく「わたしたちの物語」として想像できるように描いた本作。大切な人との繋がりを改めて噛み締め、日常の大切さや感謝の気持ちについて深く考えさせられるだろう。


    文=ネゴト / ニャム

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