ダ・ヴィンチWeb


『駐在さんとわたし』(尚騎ユウ/ぶんか社)は、田舎町に暮らすヤンキー女子高校生と、都会から赴任してきた駐在警官との出会いを描いたヒューマンドラマである。SNSで反響を呼んだ作品が書籍化された話題作だ。山と国道に挟まれた小さな町を舞台に、不器用な人々の心の変化が紡がれていく。


主人公・うららは、つづみ町で暮らす高校生。気が強く、周囲からはヤンキーとして見られているが、その内側には過去に受けた心の傷から、言葉にできない苛立ちを抱えていた。そんな彼女が新しく赴任してきた駐在・宗介から受けた第一印象は最悪だった。へらへらしていて威厳がなく、町の人から軽く扱われても怒らない。頼りない大人にしか見えなかったのだ。


しかし、本作はそこから大きく展開していく。宗介が見せる優しさは「弱い」からではない。誰かを頭ごなしに押さえつけるのではなく、相手の事情を見つめ、心に寄り添おうとする「強さ」なのだ。彼のまっすぐな言葉や行動に触れていくうちに、うららの凍っていた感情が少しずつ溶け出していく。大人だから完璧ではなく、若者だから未熟でもない。誰もが迷いながら生きていて、だからこそ他者との出会いによって救われる。本作のそんな視線があたたかい。


  • 続きを読む