
『西村しのぶの神戸・元町“下山手ドレス”3rd』(西村しのぶ/KADOKAWA)は、漫画家・西村しのぶ氏が神戸・元町を拠点に送る日々を綴った、人気コミックエッセイの最新作である。前巻から実に15年ぶりとなる刊行ながら、その魅力はまったく色あせていない。むしろ、時間の積み重ねがこの作品をより味わい深いものにしている。
本作で描かれるのは、ベランダで育てる植物、映画やファッション、愛すべき猫や犬、旅の記憶といった日常の断片である。特別な出来事ではないが、それらは決して「ただの日常」では終わらない。西村氏のフィルターを通すことで、何気ない時間がどこかエレガントで、意識的に選び取られた生活へと変わっていく。
とりわけ印象的なのは、植物や衣服へのこだわりだ。原種シクラメンやアサガオといった園芸の世界に深く踏み込み、ファッションについては流行をなぞるのではなく、自分のスタイルとして咀嚼していく。その姿勢は「好きなものを、自分のやり方で楽しむ」ことの豊かさを教えてくれるだろう。長年の執筆を経てもなお、その軸はぶれることがない。