※本記事は、雑誌『ダ・ヴィンチ』2026年6月号からの転載です。

「グループごとに思想や目指しているものが全然違う。だからアイドルは面白いんです」
エンターテインメントの象徴である「アイドル」を、現代純文学の旗手が描いたらどうなるのか。『IDOL』にその答えがある。
「ダンス&ボーカルグループの面白さに目覚めたきっかけは、BTSの『IDOL』です。メンバーの衣装のおしゃれさに目を奪われ、サビの振り付けのすごさに驚き、MVも現代アートのインスタレーションかと思うほど素晴らしかったし、歌詞の深みに惹かれました。今のアイドルは、性格からメンバー同士の関係まで全てがカメラで抜かれてしまう。でもそんな世界でなら、この作品で起きるようなことがあってもいいのかもと思いながら書きました。さすがに70年後の未来から来たアイドルはいないと思いますが(笑)」
70年後の未来から来た双子が崖っぷちアイドルの一員に
そう、〈キルトがタイムスリップするとこをサトシに見られた〉から始まる本作は、SF小説でもある。「8koBrights(エコーブライツ)」、通称エコブラのメンバーである双子のアリスとキルトは、実は70年後の未来から来た研究者。だが未来人である秘密がメンバーにバレたことから、1年後に解散するはずだったグループの運命に少しずつズレが生じていく……。
「当初は短編の予定でしたが、設定を考えるうちに『もっと書ける』と思えたので連載という形で長編に変更させてもらいました。SFはあらゆることを受け入れてくれる懐の深さがある。だからこそそこに甘えないように、ある程度の新規性はしっかり打ち出したかった。ボーイズアイドル小説としての独創性と、SFとしての独創性を同時に成り立たせることを目指しました」