
私たちの日常は、イライラやモヤモヤであふれている。急いでいる時に限って前の人が自動改札で引っかかったり、退勤時間ギリギリに仕事を頼まれたり、知人の自慢話にモヤッとしたり。些細なことでイラッとして、そんな自分にまた落ち込む。こうした負のループに陥りがちな人も、少なくないのではないだろうか。
仏教マニアとして知られる笑い飯・哲夫さんの小説『頭を木魚に』(主婦の友社)は、そんな生きづらさをどう乗り越えればいいのか、軽やかに説いてくれる一冊だ。主人公の長谷部利一は、どこまでも不遇な中年男性。数年前まで写真週刊誌の記者だったが、不倫疑惑を報じた芸能人から訴訟を起こされて会社を辞めるはめに。人に干渉しない仕事を求め、現在はタクシー運転手をしている。
だが、運転手人生もうまくはいかない。出産間近の妊婦とその夫を乗せたところ、運転の荒さにクレームを入れられ内勤に。今度は乗客の忘れ物を管理し、取りに来た持ち主に返却する役割を与えられることになる。しかし、ここでも酔った相手に胸ぐらをつかまれたり、本来の持ち主ではない人に忘れ物を引き渡してしまったりとトラブル続き。それでも妻と息子のために、不器用ながらも懸命に働いていた。