「もっとできることがあったんじゃないか」。どんなに手を尽くしたとしても、大切な人を看取るときはこう考えるだろう。『大切な人が死ぬとき ~私の後悔を緩和ケアナースに相談してみた~』(水谷緑/竹書房)は、その後悔と正面から向き合い、残された思いを綴った作品だ。
まだまだ元気でいると思っていた父親が、ある日突然、末期の膵臓がんと診断される。著者の水谷緑氏と家族はその現実を受け止めきれないまま、告知から数カ月後、延命治療の末に父親を見送ることになる。それから数年が経っても、水谷氏には「あのとき、もっとこうしていれば」という後悔と罪悪感が残り続けていた。どんどん衰えていく父親に、どんな言葉をかければよかったのか、わからなかった自分を責め続けてしまう。
そんな彼女が頼ったのが、終末期の患者と家族を支える専門職「緩和ケアナース」だった。彼女が話すのは「正解」ではなく、後悔を抱えたまま立ち止まっている人の心に寄り添う言葉だ。看取る側はつい「何をしてあげるべきか」「この選択は正しいのか」などと考えがちだ。しかし本当に大切なのは、愛する人が残された時間の中で「どう生きたいか」を知ることだという。