鼠三部作で颯爽と文壇に現れた村上春樹は、『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』や『ノルウェイの森』、『ダンス・ダンス・ダンス』など次々にヒット作を世に送り出し、一躍人気作家の仲間入りを果たす。
そんな村上春樹自身が自ら転換点になった作品と評しているのが『ねじまき鳥クロニクル』だ。発行年は1994〜95年。この頃は91年に湾岸戦争が勃発し、95年にはオウム真理教の一連の事件や阪神大震災があり、まさに激動の時代だった。戦後、いわばアメリカの言う通りに過ごしてきた日本が重要な選択を迫られ、価値観の転換を余儀なくされたような時代である。
この作品を村上春樹はアメリカで書いている。そして、この物語の後半を書いているあたりから無性に日本に帰りたくなったのだという。それほど「日本的な何か」が内包された小説なのだろうか。