引用----
「ねえ、どうしてあなたそういう人ばかり好きになるの?」
「私たちみんなどこかねじまがって、よじれて、うまく泳げなくて、どんどん沈んでいく人間なのよ」
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学生時代に何気なく読んだ小説の、そんな台詞に胸を撃ち抜かれた。私自身も、この世界をうまく泳げないでいる人間のひとりだと感じていたからだ。なんて美しい表現に満ちた小説なのだろう。ただ、女性たちの間を流されるまま、たゆたうように過ごす主人公の姿は、当時の私にはまるで理解できなかった。けれど、この作品は妙に深く心に残り続けた。
その小説とは、『ノルウェイの森』(村上春樹/講談社文庫)。言わずと知れた村上春樹の代表作だ。久しぶりに読み返して、私は再び打ちのめされてしまった。過去を回想する主人公と同世代になったせいだろうか。若い頃には、どこか気だるくも美しい青春小説として読んでいた。だが、大人になった今、この物語から感じられるのは、「死の匂い」。生きている時間のすぐそばに死があるという、どうしようもなく濃い実感だった。