『さよなら僕のメイド様』(後藤天泉/KADOKAWA)は、オタクカルチャーが爆発的に盛り上がり、今日の状況へと至る変化を見せ始めていた2008年の秋葉原が舞台。メイド喫茶を中心に繰り広げられるサスペンス・オムニバスコミックだ。賑やかさと、どこか危うい気配が同居していた当時の熱気が生々しく伝わってくる作品である。
物語の中心となるのは、それぞれ痛みを抱えながら生きる女性たち。何をやってもうまくいかず親の影に怯えるメイド・ゆりは、同じアニメが好きな常連客・イグニスとの交流に小さな救いを見出す。しかし店長から課された「ノルマ」のためにイグニスから大金を引き出したことで、彼女の心にはぽっかりと穴が空いてしまう。そんな彼女のほか、声優を目指すひめか、アイドルに人生を懸けるメグなど、心に傷や孤独を抱えた女性たちが登場する。