古舘伊知郎が語る「目的のないインプット」の有用性。思考の画一化から抜け出し「自分らしさ」を掴むための“無駄”のススメとは
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「準備」という言葉には、「やらなきゃいけないこと」という義務的な意味合いを感じていた。だから、本書を読み終わって「準備」を前向きな言葉として捉え直している自分に驚いている。
『伝えるための準備学』(古舘伊知郎/ひろのぶと株式会社)は、プロレス実況やバラエティ番組の司会、ニュースキャスターなど、幅広いジャンルで活躍してきたアナウンサー・古舘伊知郎氏の最新著書だ。独自のワードセンスや瞬発力のある喋りの裏には、入念な準備があったことが赤裸々に明かされている。
本書のなかで古舘氏は、準備を「最悪の本番」と捉え、それを経験することによって「現実の本番は必ずやそれより上向く」と語っている。「失敗を避けるために効率的に準備をするのではなく、失敗という傷を負う非効率性も含めて準備である」というのだ。何かにつけて効率が求められ、ミスが許されない空気感のある現代社会において、この考え方は臆することなく人生を前に進めるためのお守りになってくれるのではないだろうか。