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趣里が選んだ1冊は?「次第に気になり始める語り手の異常性。その歪みや気持ち悪さがクセになる」

2024年10月12日

  •  ※本記事は、雑誌『ダ・ヴィンチ』2024年11月号からの転載です。


    趣里さん

     毎月3人の旬な有名人ゲストがこだわりのある一冊を選んで紹介する、ダ・ヴィンチ本誌の巻頭人気連載『あの人と本の話』。今回登場してくれたのは、趣里さん。


    (取材・文=野本由起 写真=TOWA)


    「あっという間に読み終わりましたが、『〈わたし〉は一体誰?』『そもそも〈わたし〉とは?』と不思議な余韻が残って。小説を集中的に読んでいた時期に手に取ったのですが、特に印象に残った一冊です」


    「なんて言えばいいのかな」と慎重に言葉を選びながら、この物語を説明しようと試みる趣里さん。だが、「むらさきのスカートの女」に執着する〈わたし〉の異様さ、その不穏な気配をひと言で表わすのは難しい。


    「読み進めるにつれ〈わたし〉の異常性が気になっていくんです。本来、語り手はまっとうであるはずですが、『そんな常識どこにある?』って問われているようで。〈わたし〉の歪みや気持ち悪さがクセになりましたし、誰もがこうなりかねないという終わり方も好きでした」

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