ダ・ヴィンチWeb

※本記事は、雑誌『ダ・ヴィンチ』2026年8月号からの転載です。



冒頭に掲げられているのは強烈に魅力的で、不可思議な謎だ。2024年、月の裏側で頭部のない数十体の遺体が発見された――。矢野アロウの『マイボディ・オン・ザ・ムーン』は、壮大なスケールのSFにしてミステリー。そして、超重量級のエンターテインメントだ。


「デビュー作(『ホライズン・ゲート 事象の狩人』)は遠宇宙のブラックホールを探索する人間の話だったんですが、編集者さんから“次の長編は我々の身近な生活の中にSF的なものが飛び込んでくる、ファーストコンタクトものを書いてみるのはどうですか?”というご提案をいただいたんです」


異星人と人類の「初めての接触」の小説と言えば、全世界でベストセラーとなった『三体』や『プロジェクト・ヘイル・メアリー』。


「まさにその2作のようなものを目指しましょうと言われ、怯みました(笑)。ただ、もともとファーストコンタクトものは好きだったので、挑戦してみたいと思ったんです。まず最初に考えなければならなかったのは、異星人をどう登場させるか。いろいろな案を考えたなかで一番インパクトがあると思ったのが、異星人が体だけでやって来るというパターンでした。それが月の裏側で発見されるという展開であれば、SFにあまり馴染みがない読者さんにも受け入れてもらえるかもしれないなと」


科学者らにより「ルナ・ボディ」と命名された月面の首なし死体は、人間とは異なる免疫システムを持っていることが判明する。つまり、地球外生命体であることが確認された――という展開は物語の端緒にすぎない。この程度でネタバレと言っていたらキリがないくらい、ネタがぎっちぎちに詰め込まれている。


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