映画『チルド』が7月17日より劇場公開中だ。先に申し上げておくと、本作は「観る前に戻れなくなる傑作にして問題作」だ。
「刺激の強い殺傷流血の描写がみられる」という理由でR15+指定がされており、数は少ないながらも突発的にショッキングなシーンがある、ということも注意点だが、本作はただグロくて残酷なだけではない、「普段の世界の見え方が変わってしまう」ことこそが恐ろしいのだ。
「もうコンビニに行くのが怖い」ほどにじわじわと生活を蝕んでいく恐怖
実際に筆者個人は、本作を観た直後には、舞台であるコンビニに行くことが冗談抜きで怖くなった。それどころか、ただ歩いている時にあたりを見回してビクついてしまったし、誰かと何気ない会話をしている時にすらこの映画のことを思い出してしまうほどだった。
さらに、監督・脚本を手がけた岩崎裕介は本作で目指したものについて、「本当に怖いホラーとは、映画館を出た後もじわじわと鑑賞者の生活を蝕んでいくもの」だと考えた上で、「そのためには私たちが生きる社会と密接であること、そして批評性を切り離さないことが重要だと思っています。そうした“新しい恐怖体験”をつくることに挑みました」とも語っている。
その目論見は完全に達成できたと言っていい。本作で描かれる恐怖は心霊ではないし、大きな音で「ワッ」と驚かせるジャンプスケアにも頼っていない。それでも、描かれる恐怖に「思い当たる節がある」「この世のどこかに偏在する」と実感させるからこそ、本当に生活を蝕まれる、観る人によっては(良い意味で)本気で後悔してしまうほどの恐怖体験ができたのだ。それでいて、その恐怖と相対化させる形で、この社会で生きる希望をも逆説的に訴えかけてもいた。