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多類婚姻譚 凪良ゆう / 講談社


“正しさ”は、社会をより良い方向に導いてくれても、ときに、個人を救わない。それどころか、絶望や傷つきのただなかに突き落とすことがある。とりわけ、恋愛や結婚という、理性と理屈ではコントロールしきれない他者との関係においては。だから凪良ゆうさんは、恋愛小説を描き続けるのかもしれないと、『多類婚姻譚』(講談社)を読んで思った。


直木賞候補となった同作は、タイトルのとおり、婚姻をめぐるさまざまな人間模様を描いた短編集。惜しくも受賞は逃してしまったが、これまでの凪良さんの作品とはまた違う読み味に、心をつかまれる読者は多いはずだ。


一作目「Thank you for your understanding」の主人公・小暮華は、会社をやめて職探しもしない恋人と暮らし、実家からの「いい人はいないのか」という圧力に煩わしさを覚えている。東京で出世する娘は誇らしい。けれど、プライベートを支えあう誰かがいてくれたほうが安心。そう思うのはまっとうな親心で、自分たちの時代とは違うのだから結婚というかたちでもなくていいと“正しさ”を譲ってくれる親だからこそ、華は反論できなくなる。そうして恋人とともに帰省することを勢いで約束してしまうのだが、そこからの展開に心をえぐられた読者も多いのではないだろうか。


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