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川谷絵音のエッセイ連載「持っている人」/第2回「労働過多になったカメラ」

  • 川谷絵音

    撮影でオーストラリアに行くことになった。indigo la EndというバンドのMUSIC VIDEO撮影だ。滞在時間は24時間というハードな行程だった。前日に岩手で礼賛のフェス出演があり、朝から新幹線で岩手に向かった。ライブ後ステージからはけながら衣装を脱ぎ、そのままタクシーに乗り込み、新幹線で東京へ。そこから羽田に向かい、19:30発のJALに乗り込んだ。ここから約10時間のフライトだ。到着したらそのまま撮影に入るので、飛行機内で寝ておく必要があった。ここまでで相当疲れていたので、機内食を食べたらすぐ眠れるだろう。機内食を食べ終わったのが21:30頃。今から寝れば7時間は眠れる。十分だ。歯磨きを終え、席を倒し、コンタクトを外して鼻呼吸テープを口に貼り、目を閉じた。深呼吸をして睡眠を導入する。完璧だ。マスタープランだ。


    なのにおかしい、全然眠れる気がしない。


    脱力して飛行機の小刻みな揺れに身を任せてみる。あなたの動きには逆らいません。だから眠らせてください。隣の席からは、よほど感動する映画でも見ているのか嗚咽の音が鳴り響いている。何の映画ですか、教えてください。いや、眠らせてください。

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