土砂崩れに見舞われ、完全に孤立した山奥の研究所。実験室に閉じ込められたふたり。もし、彼女たちの身に危険が迫っているのなら、すぐにでも助け出さなければならない。だが、彼女たちが閉じ込められた部屋の周囲には硫化水素が立ち込め、扉を開ければ、ふたりは一瞬で死ぬ。救助がいつ来るとも知れないなか、部屋の外に残された者たちは、救助を待つべきか、ただちに突入すべきかで対立する。さらに、そのさなか、連続殺人まで起こり……。
これ以上なくスリリングな舞台設定。逃げ場を失っていくような緊迫感。他人事ではいさせてくれない没入感。そんな極限のスリルを味わわせてくれるのが、『シュレディンガーの密室』(麻根重次/講談社)。「シュレディンガーの猫」のような状態に追い込まれたふたりをめぐる「究極の選択」の物語だ。本作について、『メフィスト』編集長・森田練は「読む前の自分には戻れない――至高の読書体験」と評するが、まさにその通り。この本は、読み終えた瞬間、世界の見え方が変わってしまうような一冊。ミステリ作家の間でも評価が高く、島田荘司は「21世紀本格の絶望」、竹本健治は「この書を先んじて推薦できることを至福に思う。『いいから、読みなさい』」、法月綸太郎は「SF設定でない、現実世界の事件だからこそ真価を発揮する“この”トリック、“この”動機――そして、“この”ラスト」と、それぞれ賛辞を寄せている。編集者や名だたるミステリ作家をも魅了した、今、注目すべき一作なのだ。