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必要なオマルは70個ではなく72個必要? 文庫化されたら世界が滅ぶ1冊『百年の孤独』の笑いを考察/斉藤紳士のガチ文学レビュー⑱

  • 百年の孤独
    『百年の孤独』(ガブリエル・ガルシア=マルケス/新潮社)

    今年話題になった書籍を選べ、と言われたら迷わず挙げられるのがガルシア=マルケスの『百年の孤独』だろう。 半世紀以上前の翻訳小説が令和の現代になぜ空前のヒットとなったのか? もちろん初の文庫化により、安価で購入しやすくなったということも大きいとは思うが、一部の読書好きにだけ支持されていると思われた本作がここまでのヒットとなったのは他にも理由があるのではないだろうか。


    『百年の孤独』は南米コロンビアが舞台のお話である。 ブエンディア家という一族がマコンドという村を築いてから百年で消滅するまでの歴史が奇想天外なエピソードを織り込んで描かれ、いわゆる「魔術的(マジック)リアリズム」を駆使して語られる。 ブエンディア家は百年の孤独を運命づけられているのだが、その原因は血縁の濃い従兄弟同士であったホセ・アルカディオとウルスラが愛し合い、それがもとで殺人を犯して故郷を出奔したことだった。 新たに建設したマコンド村で一族は同じ名前、同じ出来事を繰り返し、最後は再び近親相姦を犯してこの世から消え去ってしまう。

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