疾走感あふれるサウンドと内なる葛藤が交錯する一曲『最高傑作』シンガーソングライター、ヤマモトガクの新たな音楽の旅路
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文/曽我美なつめ
ヤマモトガクとして歌を歌い始めてから約2年。昨年2023年に自身初となるアルバム「怪談」をリリースして以降、ちょっとした燃え尽き症候群になっていた、と彼は自身のnoteで語る。 自身の音楽制作歴においてひとつ目標としていたことを果たし、さあ次は、というかこれからはどこに行こうか。 そう思い悩み試行錯誤を重ねた結果、10か月ぶりの新曲としてリリースされたのが今作ともなっている。
前回リリースされたアルバムの収録曲と比較すれば一目瞭然ならぬ一聴瞭然の通り、今曲の大きな特徴のひとつがまず軽快かつアップテンポに展開されるサウンドだろう。 確かな疾走感をもって走っていく音の一方で、その詞にはある意味彼の世界観を大きく構成する要素でもある、湿度を帯びた情念を滲ませる言葉が並ぶ。 リスナーの中には、そのギャップを印象的に感じる人もきっといるに違いない。
これからの身の振り方を考えたのち、「音楽をする自分を肯定する」「自分の呪いを解く」ためのクリエイティビティへと意識を向け始めた彼。 そういった価値観の変化や、新たな行く先を見つけた決意もまた、今作の曲調には落とし込まれているのかもしれない。
自己嫌悪の延長として、自分に似た我が子を憎む誰か。しかしその人物が、我が子も含め出来損ないの自分を愛そうとする様が今作では描かれている。 歳を重ねるうちに、あるいは様々な経験を重ね、徐々に見える世界が広がる中で、少しずつ嫌いだったはずの自分が許せるようになる。 その光景は、きっと今まさにヤマモトガク自身が立っている場所でもあるのだろう。
だからこそ同じように、未だ自分を赦せていない人にも、ようやく自分を赦せるようになってきた人にも、この曲は届く可能性を孕んでいる。 ヤマモトガクのシンガーソングライターとしての歩みは、この曲を機に第二フェーズへと進んだばかり。これからまだ、きっとどこへだって行けるはずだ。
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