世界的に読まれ、毎年のようにノーベル文学賞をめぐって名前が挙がる村上春樹。しかし、いざ読んでみようと思うと作品数が多く、「結局どれから読めばいいの?」と迷ってしまう人もいるだろう。恋愛小説から不思議な異世界をめぐる物語、映画化された短編まで、その作風は実に幅広い。そこで村上春樹を初めて読む人におすすめしたい5作品を、作品ごとの魅力とともに紹介する。
『風の歌を聴け』
村上春樹の世界にまず触れてみたいなら、1979年に発表されたデビュー作『風の歌を聴け』から始めるのもいい。
大学生の「僕」が夏休みに故郷へ帰り、友人の「鼠」とビールを飲み、偶然出会った女性と交流する――と書けば、ごく普通の青春小説のようだ。しかし、断片的に置かれるエピソードや記憶、独特の乾いた会話から、説明されない何かがじわじわと浮かび上がってくる。物語のすべてを明快に語らないからこそ、「これは何を意味しているのだろう」と考えたくなるのがおもしろい。比較的短く、村上春樹独特の文体や比喩や哲学を一冊で体験できるので、「まず試しに読んでみたい」という人には格好の入り口である。考察好きの読者を刺激する作品としても親しまれている。あなたはこの本にどんな考察を抱くだろうか?