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「うちの子言葉遅い?」つい、ほかの子どもと比べてしまう… 子育てに正解を求め悩んでいる人におすすめしたい、母親たちの群像劇

  • ほかの子と、ほかの親と、比べてしまう自分をやめたい

     SNSを開けば簡単に一般人の日常を知ることができる今、他人と比べずに生きていくことは難しいのかもしれない。『ほかの子と、ほかの親と、比べてしまう自分をやめたい』(むぴー/KADOKAWA)は、比較せずに生きることの難しい子育ての現実を鮮明に映し出す群像劇である。


     ベッドタウン「あさひが丘」を舞台に、ちさと、みさ、ゆかり、3人の母親と家族の日常を中心に物語は進んでいく。彼女たちは、子育てに伴う喜びと不安、そして自己との葛藤を通じて成長していく。「うちの子 言葉遅い?」というちょっとした不安から始まり、他人との比較や自己否定など、現代の親たちが直面するさまざまな問題が描かれている。


     今まで順調に人生を歩んできたのに、子育てでつまずく。結婚や出産で幸せになれると思っていたのに、何かが足りない感覚が続く。親の顔色をうかがって自分で選んでこなかったことが、心のトゲとなっている。それぞれ異なる環境・背景で生きてきた登場人物が、子育てを通じて自己と向き合う姿がリアルに描かれており、読者は自身の姿を彼女たちの中に見出せるだろう。「自分ごと」として共感して読み進められるのが本作の最大の魅力である。

     子育てをしていると正解が欲しくなる。悩むちさとが母親に自分の子育てが正解だったか聞いた答えにハッとさせられ、子育てに完璧な正解などないことに気づく。本作には、自身の内面を掘り下げる機会になるような問いやセリフがちりばめられている。また「親がいつも正しいとは限らない」といった子育てで心に留めておくべき言葉も多く、深い気づきを与えてくれる。


     子育てで悩まない人はいないだろう。むぴー氏の温かな視点で、マウンティングではなく互いを思いやる姿勢が貫かれている本作は、今自分がいる状況でできる精一杯をやるしかないのだと背中を押してくれる。子育てに悩み、行き詰まりを感じている人々にとって、何度も読み返したくなる1冊となるだろう。


    文=ネゴト / Ato Hiromi

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