自身の心を揺らした経験を率直な言葉で綴るエッセイのほか、絵本やラジオなどの幅広い活動で支持を集める文筆家の伊藤亜和さん。新刊は、現代を気高く生きる女性たちをテーマにしたエッセイとショートストーリーを収めた『魔女になりたい』(文藝春秋)だ。「ずっとやりたかったことが実現できた」という本書は、どのように生まれたのだろうか。魔女という存在への思いや、本書を書き終えた今の関心事まで、幅広く話してもらった。
「魔女」は女性がなりたい姿と周りからの期待が重なった存在
――「現代の魔女」をテーマにエッセイを書こうと思ったきっかけを教えてください。
伊藤亜和さん(以下、伊藤):私はもともとファンタジーや魔法に親しんできて、子どもの頃はファンタジーと現実の区別もつかないほど没頭していたのですが、わりと早い段階で、自分は魔法を使えない側の人間だとわかってしまって。そういう自分の欠損感と――今は小説も書いていますけど、私は現実に基づいたエッセイから文筆業を始めて、(CREA WEBの)この連載を始めた頃もエッセイだけを書いていたので、なかなかそこから抜け出せず、現実世界にとどめられているっていうもどかしさもあって。そのふたつが重なったのがきっかけですね。
――「私は魔法を使えない側の人間だ」とわかったのはいつ頃だったんですか?
伊藤:実はそこはまだ納得できていないんですけど(笑)。でも、小学校に入る頃ぐらいには、壁をすり抜けたり、空を飛んだりはできないってわかりました。今は、現実にある材料でどうにか魔女になれないか、ということをずっとやっていますね(笑)。魔法的な力はなくても、振る舞いやファッションとか、そういうところから魔女に近づきたいっていう思いはずっとあります。