ダ・ヴィンチWeb

※本記事は、雑誌『ダ・ヴィンチ』2026年10月号からの転載です。



目当ての本がなくても、フラット書店に立ち寄るという奥さん。この本との出会いも、偶然の産物だった。


「魚が好きなので、魚に関する小説や専門書がないかなと思って。そんな中、ふと目に入ったのが『窓の魚』という恋愛小説でした」


登場するのはふた組のカップル。だが、互いの思いはすれ違っている。


「それぞれに欠落があって、どこか乾いていて。つかみどころがないからもっと知りたくなるし、時には不気味に思えて突き放したくもなる。そそられる書き方で人間の暗部を表現していて、西さん独特の感性が色濃く表れていると思いました」


中でも印象に残っているのは、心と体に傷を抱えるアキオ。


「恋人のナツから見たアキオは、少し子どもっぽいけれど優しい彼氏に見えます。でも、アキオ視点の章では、違った一面が見えてくる。その裏切りにぞわっとしましたし、タイトルを象徴する人物だとも思いました。水槽にいる魚と同じように、彼はガラス1枚隔てた向こう側の他者を拒絶すると同時に、他人と相容れない疎外感や孤独も感じている。読後にほの暗い余韻が残りますが、読みやすいので多くの方に手に取っていただきたいです」


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