人間と犬は、遥か昔からずっと友だち。いつの時代も、日本人と犬はどこか対等な関係で生きてきたはず。そう思い込んでいた。だが、そんなことはなかった。私たちは犬の力を借り、ともに生きながら、ときに蔑み、利用し、都合が悪くなれば、その命さえ奪ってきた。そんな歴史があったなんて、この本を読むまで考えたこともなかった。
『その犬をください』(逢坂冬馬/KADOKAWA)は、『同志少女よ、敵を撃て』(早川書房)で2022年本屋大賞を受賞した逢坂冬馬の連作短編集。独ソ戦を生きる女性狙撃兵たちを通して、戦争が人間に何をさせるのかを描いた逢坂が、最新作では明治初期から令和まで四つの時代をたどり、犬と日本人が歩んできた歴史を描く。読み進めるほど浮かび上がるのは、「犬は人間社会を映す鏡」だということ。物語が進むにつれ、その言葉の重みは増していく。