どこか懐かしくて、ほのぼのしていて、くすぐったくて。それでいて、予想もしなかった“異質”な存在の登場に、思わずふふっと笑ってしまう。
いつもの地元、いつもの友だち、久々の再会と、新しい挑戦。『ギャルにひかれて寺マルシェ』(KADOKAWA)を読んでいると、不思議と元気が湧いてくる。この作品は、2024年に本屋大賞を受賞した『成瀬は天下を取りにいく』(新潮文庫)で知られる宮島未奈の最新作。とある田舎町を舞台にした、大人になりきれない大人たちの青春譚は、ページをめくればめくるほど、私たちを前向きな気持ちにしてくれる。
「まみたん法話」にひかれて寺を訪れると、元同級生がギャル僧に!?
主人公は、亡き父の酒屋を継いだものの、商売への情熱もなく、なんとなく日々を過ごしている30歳の英介。そんな彼のもとに、高校卒業後に町を出た幼なじみの悪友・光司が現れる。この男は、しばしば厄介ごとを土産に帰ってくるのだが、今回の目的は、子どものころ、近所の陵泉寺に埋めたタイムカプセル。中に入れたポケモンカードが、今では数十万円で取引されているため、どうしても掘り起こしたいというのだ。かつて寺への出入りを禁じられた光司は、自分の代わりに陵泉寺で開かれる〈寺マルシェ〉を偵察してほしいと英介に頼み込む。気乗りしない英介だったが、マルシェのチラシにあった「まみたん法話」の文字に興味を引かれ、寺へ足を運ぶ。そこで英介が再会したのは、英介や光司と中学まで同級生だった片倉真実子。かつては真面目な優等生だった彼女が、今では実家の陵泉寺で副住職を務め、ギャルメイクで法話をしていたのだ。その変貌に英介が呆気にとられる一方、光司は彼女を〈ギャル僧〉として売り出し、ひと儲けしようと思いついて……。