ダ・ヴィンチWeb

※本記事は、雑誌『ダ・ヴィンチ』2026年11月号からの転載です。



9月18日(金)にキャラクター文芸レーベル「アース・スター文庫」が創刊となった。「すべての人に、ページをめくる喜びを――」をコンセプトに、ホラー・ミステリー・サスペンス・ファンタジー・ロマンス・現代のお仕事ものなど、豊富な作品ラインナップを展開していくという本レーベルの注目6作品を紹介!


大人気シリーズが待望の文庫化!


『【文庫版】 戦国小町苦労譚 一、邂逅の刻』 (夾竹桃:著 平沢下戸 :イラスト)935円(税込)


ごく普通の高校生・綾小路静子は、祖父の家からの帰り道に突然、時空を超えて戦国時代にタイムスリップしてしまう。そして気がつけば目の前には、かの有名な織田信長が立っていた。静子は農村を一つ与えられ、得意の農業で「才を示す」ことに……。尾張国の富国強兵からの天下布武ムーブメントに否応なく巻き込まれていく静子の運命は?


退魔師コンビがオカルト事件を追う! 刺激的なバディホラーミステリー


『TSUKIMONO  退魔師AKT』 (内藤 了:著 たけもとあかる:イラスト)770円(税込)


テレビドラマ化された警察小説「猟奇犯罪捜査班・藤堂比奈子」をはじめとして、「よろず建物因縁帳」「警視庁異能処理班ミカヅチ」など、ホラーやミステリーの人気シリーズを数多く手がけてきた内藤了さん。このほどアース・スター文庫の創刊ラインナップとして刊行された『TSUKIMONO 退魔師AKT』は、著者が大得意とする民俗学ホラーにミステリー要素を絡め、さらにバディものの面白さも盛りこんだ期待の新シリーズだ。


物語は山間部にある廃墓地を、作業員たちが取り壊しているシーンから幕を開ける。墓石が撤去され、あと少しで工事が完了するというところで、木の根元から古い石棺が発掘された。雷鳴がとどろくなか、作業員たちが棺の蓋をずらすと、中から“無数の動物が融合した異形の人骨”が現れた。


石棺を託された都立大江戸大学の教授・青龍仁は、学生たちとともに石棺の調査を始める。側面に赤い塗料が塗られ封印の呪文が書かれた石棺は、いかにもいわくありげだ。しかし中に収められていたのはただの人骨であり、工事現場で撮られた写真とは似ても似つかないものだった。


その後、墓地の解体工事に立ち会っていた業者の社員が、自宅アパートで死体となって見つかる。しかも彼の体は魚のように三枚におろされていた。新聞で事実を知った仁は、彼の屋敷に下宿しているフリーターの若者・重堂大牙(タイガ)と、大学の教え子である有田楡(エル)をともなって石棺発掘現場に向かう。そこで待ち受けていたのは工事関係者のさらなる変死体。しかも現場ではタイガの身体に異変が起きる。事件の背後に凶悪な“憑き物”が絡んでいることを察知した仁は、タイガを助手に解決に乗り出した。仁とタイガはともに四神の霊を宿した、現代の退魔師だったのだ。


冒頭からぐいぐいと興味を惹きつけてくる小説だ。謎の石棺、異形の人骨、75人を祟り殺そうとする憑き物。被害者は次々とショッキングな最期を遂げていき、とても警察の手には負えない。オカルト的な事象をいかにも実際にありそうな、現代的なタッチで描くのが内藤ホラーのひとつの特色だが、今回もソーラーパネル建設の名目で破壊された墓地から呪いが広がるという恐ろしい出来事が、リアルかつサスペンスフルに語られていく。


この怪奇な事件に対処するのが、仁とタイガの退魔師コンビだ。仁は御殿と呼ばれる豪邸に住む資産家の息子で、いつもクールで理知的な性格。一方のタイガは肉体労働をして稼いだ下宿代を、困っている人に貸してしまうような根っからのお人好しだ。タイプが正反対の二人だが仁には“青龍”、タイガには“白虎”の霊が宿っており、それが退魔師としての力の源になっている。二人のバックボーンにまだ謎は多いが、オカルトバディものとしてすでに十分な魅力を感じさせる。


それ以外のキャラクターも個性的だ。祖母に命じられて20代半ばで大学に入学したエルは、銭湯の娘で背中流しの達人。青龍家に長年仕えるお手伝いさんのヨネは、タイガに向けた嫌味たっぷりの台詞で笑わせてくれる。こうした人間味を備えたキャラクターが織りなすドラマも、内藤作品の読みどころ。憑き物をめぐる不可解な事件はミステリー的展開を見せながら、手に汗握る最終章までノンストップで突き進んでいく。果たして仁とタイガは死の連鎖を止めることができるのか?


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