芥川賞受賞『バリ山行』作者・松永K三蔵さんが、日常のすぐ横にある「死の可能性」を描いた理由。「巨大なシステムや資本の前に個人は非力だけど…」《インタビュー》
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『バリ山行(さんこう)』(講談社)で第171回芥川賞を受賞された松永K三蔵さん。芥川賞発表から約4カ月、少し落ち着いてきたところで、あらためて作品についてお話をうかがった。
(取材・文=荒井理恵)
人は自分の問題をザックと一緒に背負って山にやってくる
――芥川賞受賞の反応はいかがですか?
松永K三蔵さん(以下、松永):ありがたいことにいろいろエッセイのお話をいただいたり、インタビューをしていただいたり、受賞は7月のことだったんですが遥か昔のような気がします。生活はあまり変わらないですね。建築関係で仕事をしていますが、会社の人は気がついてないみたいですし。
――お住まいは西宮で物語の舞台の六甲山の近くですね。ご自身も登られるそうで。
松永:そうですね。4、5年前くらいから登り始めました。体を動かすのは好きなんで、それまではロードバイクに乗ってましたが、ちょっとメンテが面倒くさくなってきて。本当に趣味で登ってる感じです。