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安部若菜 エッセイ連載「私の居場所は文字の中」/第7回「普通は嫌だ」

  • 中学生の頃、「普通」であることが何より恐怖でした。


    友達のあの子はあんな特技がある、あの子は明るくて、あの子は勉強が図抜けていて……。じゃあ、私は?


    振り返ってみれば、今も昔と変わらず同じようなことで悩んでいます。


    かといって普通から外れるのは怖くて。
    中学では陸上部でしたが、人数の関係で、砲丸投げ・円盤投げが専門種目でした。それも立派な競技なのに、当時は短距離や長距離と“普通”の競技でないのが無性に恥ずかしく感じていました。


    大阪府で入賞するくらいには本気で円盤投げに打ち込んで大好きな種目だったくせに、普通が嫌いなくせに、
    美容室で「陸上部なんだ!短距離とか?」と聞かれたときには嘘で「短距離です」と答えたり、クラスメイトに練習風景を見られるのを照れたり、
    中途半端で情けない中学時代でした。


    中学の頃と現在で唯一違うのは、人と違うことを楽しめるようになったことです。
    でもそれは今が「人と違うのが良い」と肯定してくれる空間で、安心して羽を伸ばせるから。

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