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疲れきった妻を、素敵な器と夫の手料理がお出迎え。“遠距離週末婚”で暮らす夫婦の「おいしい時間」

  •  夫婦のカタチはさまざまである。『また来週、あなたの器でいただきます』(小川茉莉/KADOKAWA)は、“遠距離週末婚”をおくる夫婦の「おいしい時間」を描く。


     田舎暮らしで陶芸家の夫と、都会で雑誌の編集者をつとめる妻。まるで正反対の環境で生活している夫婦が、隼人と優子だ。平日はそれぞれの場所で過ごし、週末には優子が隼人の元へと帰ってくる。


     本作では、そんなふたりの食事の時間がなんとも印象的に描かれる。陶芸家の隼人が作った器を使い、おいしそうに食事をする優子。その柔和な表情から伝わってくるのは、ふたりが満ち足りた時間を過ごしている、ということ。一緒にテーブルを囲んでおいしいものを食べることで、離れていた時間の空白を埋めているのかもしれない。


     たとえ惣菜や冷凍食品に頼る慌ただしい食卓でも、トレーから器に移すひと手間が、目にも口にもおいしさを運んでくれる気がする。料理をよそう際、色合いや季節感など、じっくり楽しみながら器を選ぶふたり。隼人の器に惣菜をよそえば、まるでレストランのように華やかになる様子に、器が持つ「彩り」の力を感じる。

     隼人と優子はお互いを人生における「彩り」だと思いあっている。料理のおいしさを一層引き立てるのが器であるように、お互いがお互いの人生を豊かにするために必要不可欠な存在なのだろう。そんなふたりの心温まる逢瀬に癒される。


     四季の移ろいを感じさせる風景や料理など、細かな描写にまでこだわりを感じる本作。食卓のシーンはおいしそうな手料理やこだわりの器など、どれもカラーで見たくなってしまう場面ばかりだ。


     夫婦のカタチはさまざま。限られた時間の中でお互いを大切にする、隼人と優子のようなカタチに憧れる人も多いのでは。ぜひ本作を読んで癒されていただきたい。


    文=ネゴト / Ato Hiromi

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