紫式部『源氏物語 二十八帖 野分』あらすじ紹介。継母の美貌にノックアウトされた夕霧。父と同じ過ちを犯してしまうのか…!?
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平安時代の恋愛物語として有名な『源氏物語』ですが、古典作品であり難しく感じる方も多いかもしれません。身近に感じられるように、1章ずつ簡潔にあらすじをまとめました。今回は、第28章「野分(のわき)」をご紹介します。
『源氏物語 野分』の作品解説
『源氏物語』とは1000年以上前に紫式部によって書かれた長編小説です。作品の魅力は、なんといっても光源氏の数々のロマンス。年の近い継母や人妻、恋焦がれる人に似た少女など、様々な女性を相手に時に切なく、時に色っぽく物語が展開されます。ですが、そこにあるのは単なる男女の恋の情事にとどまらず、登場人物の複雑な心の葛藤や因果応報の戒め、人生の儚さです。それらが美しい文章で紡がれていることが、『源氏物語』が時代を超えて今なお世界中で読まれる所以なのでしょう。
「野分」は野分(台風)が吹き荒れる六条院の女君を見舞う夕霧が、嵐のどさくさに紛れて女君の姿を垣間見ていくというストーリーです。父・源氏と違い生真面目な夕霧は、恋愛事にあまり関心がなく、初恋の雲居雁一筋でしたが、「野分」では美しい女性たちを垣間見てドキドキする15歳の少年らしい一面が描かれます。若かりし頃、父・桐壺帝の妻である藤壺に恋をして過ちを犯した源氏とは反対に、夕霧は美しい継母にときめく己を戒めます。そのわずかな夕霧の変化を見抜き、紫の上の姿を見たことを察知した源氏の抜け目ない一面も窺い知ることができます。また、夕霧が垣間見た紫の上、玉鬘(たまかずら)、明石の姫君の美しさは、桜・山吹・藤の花にたとえられ印象的でこの章の見どころにもなっています。