※本記事は、雑誌『ダ・ヴィンチ』2026年11月号からの転載です。
紙の本の未来のために
「最近ヴァンヌーボ使えないこと増えてきましたね。はい。いいです。同じような微塗工紙のライトスタッフGAでいいです。これより安い紙を探すのは難しいと思いますよ。並製本で見返しはもう10年以上前から付けないことのほうが多いんで、はじめから考えていないです。え、まだ予算オーバーしてます? なら別丁扉もなしにしましょうか。そのかわり本文の1ページめを別丁扉風にちょっとだけ凝ったデザインにしますんで。ページ数に余裕ありましたっけ? ないか。じゃあ本文を詰めてページあたりの行をもう1行増やします。12・5Qの22行か……。まあ、なくはないかな。僕はもう老眼でちょっとキツいですけど。クリックポストで献本するためにあと2㎜束幅減らす必要ある? 本文の斤量ひとつ下げましょう。しょうがない」みたいな世知辛いやりとりを編集者と電話でしながら私はブラウザでTwitter(X)を眺めていた。「紙媒体としての役割に区切り」。あー、『ダ・ヴィンチ』も休刊だもんな……などとつらつら画面をスクロールしていると黒く禍々しい物体が目の端に入った。えなにこれ。すご。本? わけわからん。今日北千住でしか買えない? 遠! 残り少ない? うっそ、すぐ行かなきゃ。私はだいぶ元気を取り戻して地下鉄の駅に走った。
選・文:川名 潤