小説を読み終えたはずなのに、どうしても頭から離れない。「あの描写には別の意味があったのでは?」「あの人物は本当のことを話していたのか?」。そんな疑問が次々と湧き上がり、思わず最初のページに戻ってしまう作品がある。
今回は、読者自身が断片的な情報をつなぎ合わせるホラーから、結末を知ることで物語の印象が一変するミステリまで、考察する楽しさに満ちた小説5作を紹介する。読み終わったあとも物語の世界から抜け出せなくなる、そんな読書体験を味わってほしい。
▶近畿地方のある場所について
▶方舟
▶変な家
▶残穢
▶ぼぎわんが、来る
『近畿地方のある場所について』(背筋/KADOKAWA)
■バラバラの怪談がつながるとき、恐ろしい「何か」が姿を現す
ある地域にまつわる怪談を調べていた編集者が、突然失踪した。残されたのは、雑誌記事やインタビュー、ネット上の書き込みなど、一見すると関連性のない奇妙な記録の数々。読み進めるうちに、異なる場所で語られた怪談に共通する言葉や出来事が浮かび上がってくる。果たして、これらの記録は何を意味しているのか。
本作の醍醐味は、読者自身が調査に参加しているような感覚を味わえることだ。断片的な情報をつなぎ合わせ、仮説を立て、また新たな手がかりに出会う。そうして恐怖の輪郭が少しずつ見えてくる構成が実に巧みである。何気なく読み飛ばした一文に、重要な意味が隠されているかもしれない。読み返すたびに新たな発見がありそうな、考察好きにはたまらないモキュメンタリー・ホラーだ。