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母の実家が魚屋だから寿司好きと言っていい? 自分のルーツから好きな食べ物を考える/好きな食べ物がみつからない⑤

  • 『好きな食べ物がみつからない』(古賀及子/ポプラ社)第5回【全6回】

     自分が本当に好きな食べ物がわからなかったエッセイストの古賀及子さん。「好きな食べ物はなんですか?」この問いに、あなたはうまく答えられますか? 自分のことは、いちばん自分がわからない。どうでもいいけど、けっこう切実。放っておくと一生迷う「問い」に挑んだ120日を、濃厚かつ軽快に描いた自分観察冒険エッセイ『好きな食べ物がみつからない』をお届けします。


    好きな食べ物がみつからない
    『好きな食べ物がみつからない』(古賀及子/ポプラ社)

    血が魚好き


     母の実家が、東京の都心で魚屋をやっていた。一般的な魚屋ではなく、卸しに近い、配達がメインの商売だ。長靴で歩き回る土間のような店舗には大きな水槽が両端と真ん中に重ねて置かれ、店の奥には靴を脱いで上がる板張りの事務スペースがあって、窓ガラス越しに店が見えるようになっている。店頭に向かって事務机が3台並び、よく祖母が座って帳面をつけていた。

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